大芋地区と市野々に暮らす人たち
市野々の隣村、大芋地区小倉に住む田川剛さんと、奥様の美英さん。
田川さんご夫妻はこれまで海外を拠点に活躍され、ご縁があり丹波篠山市に移住されてきました。お二人ともとても仲が良く、今の暮らしを楽しそうに話してくださいました。
海外に長く拠点を置きフライトアテンダントとして普通の人の何十生分も海外を飛び回っていました。10年ぐらい前からいずれは日本に戻り日本の田舎の良さを外国人に伝えたいと常々思っていました。
大阪が実家なので、大阪からそんなに遠くない環境のいいところ滋賀とか奈良とか岡山などあちこち移住先を探しました。その中で篠山なんとなく人がいいなぁ、意外と大阪から交通の便もいいし近いなぁ、と篠山に候補が絞られていきました。特に古民家にこだわって探していたわけではなかったのですが、この家を見て一目で気に入りました。それと、篠山は昔ながらの風景が良く守られていて印象がよかったのが決め手でしたね。
茅葺の日本の古い民家の様子がよく残ったこの家と集落なら外国の人にも喜んでもらえるのではと思い内覧から一週間で購入を決めました(笑) 去年2月から移住先を探して8月に内覧即決、11月末に引っ越しました。
通訳案内士の国家資格を取得し、外国の方に日本の良さを少しでも知ってもらえるように観光ガイドやインバウンド受け入れに関する橋渡しなどをしています。
この集落で家を買って移住して町内会に入ったのはたぶん私たちが初めてだと思います。移住当初から村の人たちが私たちのことを大事に思ってくれていると感じています。畑や田んぼ、農業、草刈りのことなどいろいろ教えてくれます。
私たちが住んでいる家は大芋地区の小倉という集落にあります。だいたい15世帯程度しかないのですが、海外駐在を経験された方が3名ほどいらっしゃるんです。他の方も都市部で働いていた経験がある方が多いようで意外と皆さん都会的な感じがあります。
他の集落でも同じか分かりませんが、ここの方たちは程よい距離感を保ってくれていてとても居心地がいいです。
村役は草刈り、シカの防護柵の点検などがあります。自治会以外に何ヶ月に一回男衆の集まりがあります。だれも手を入れていない畑で黒豆など栽培したり、それに付随して電柵張ったりしています。そこで収穫された収益は男衆の飲み会に(笑) 婦人会は年3回ありますが、公民館の草むしりだけです。
初めのうちは欲しいものがすぐ歩いて買いに行けないということに困ったんですよ。例えばペン一本でも直ぐ買いに行けないという今までの生活と全然違ったので・・・。今では車で20分くらいのスーパーに買い物に行くことも特に不便に感じません。隣の集落で一週間に2回朝市があっていつも自転車で野菜をドッサリ買いに行ったりします。最初は「真冬に自転車で買いに来るあの人はどこの人?」となっていましたが、今ではもう常連です(笑) あと今はオンラインで何でも買い物が出来るので物質的には不便とは感じないですね。
家を買ってから分かったのですが、レストランなど飲食業をしようとすると大きな浄化槽を入れないといけないと知りました。隣の集落までは下水道が通っているのですが、この集落には来ていません。市役所に問い合わせても下水道延長の計画はないとのこと。
私たちはお店をするつもりはなかったのでいいのですが、こじんまりとしたカフェでも出来たらなぁとは思っていました。浄化槽は初期費用やメンテ費用など結構掛かるので下水道がある地域との不公平感があります。差額を補助するなどあればいいなと思っています。
田舎暮らしをする前は移住したらのんびり縁側でビール飲みながらギターでも弾いて過ごせたらなと思っていました。ですが実は田舎での生活はいろいろ忙しいです。草刈りや家の修理、田んぼや畑の手入れなど何かと仕事があり夜になると疲れて寝てしまうんです。ギターを弾いている暇がありません(笑)
引っ越して早々今年からお米造りもしています。移住してすぐお米を作るつもりではなかったのですが、家の前の田んぼが今年急に耕作しないことになってそれがきっかけで作付けするようになりました。その時すでに4月半ばを過ぎていて地元の人からもさすがに今年は作付け無理だと言われたのですが、荒れた状態が気になって4月20日から田植えの準備を始めました。苗はもう発注できない時期だったんですけど地元の人から余ったものを分けていただいてなんとか1反弱ほどの田んぼですが田植えすることが出来ました。実は全て手植えでしました。地元の人でも驚いていましたよ。案外最近は田植え機でするので地元でも珍しかったようです。とりあえず1年田んぼを頑張りながら日々模索しているところです。
(剛さん)この地域も他と同様高齢化が進んでいて空き家や耕作放棄地も増えてきていますが、地元の人は案外のんびりしています。まぁ無理に村おこしとかするものどうかと思いますし、時代の流れに任せるのも一つの選択かと思います。
以前香港に住んでいて目まぐるしく変わっていくものばかり見て来たので、変わらないというもとがどんなに貴重で二度と手に入らないものか改めて感じます。少なくても私たちがこの家に住むことで家や周りの環境を維持することができるんじゃないかなぁと思っています。
(美英さん)コロナが広まる前に外国の友人に限らず日本の友人も家に招いたのですが、日本の農村風景や伝統的な家にとても喜んでくれました。訪れてくれる人に少しでも自分の国の文化や良さを知る切っ掛けになってくれたらいいなぁと思います。
家の裏庭から見える、村の風景がとても気に入っています。トイレが外にあるのですが、冬の夜に出て行くと美しい星空を味わえます。隙間が多い家なので時たま雨蛙と一緒にお風呂に入ったりしています。
大芋地区に暮らす人たち
大芋地区には、どんな方々が暮らしているのでしょうか?みなさんの想いを、ちょっと聞いてみました。